犬の安楽死を行うには?適用条件やどこで行うのか、措置の方法などを解説

犬を抱きかかえる飼い主 犬の火葬・葬儀

ペットの犬を安楽死させてあげることはできるのか?

ペットの犬がいくつかの条件に当てはまる場合のみ、安楽死させてあげることが可能です。日本にはペットの安楽死を制限する法律はありませんが、動物愛護法ではみだりに愛護動物を殺傷することが禁止されています。必ず獣医師に相談したうえで、本当に安楽死が必要なのかよく考え決断しなければなりません。

犬を安楽死させてあげる場合、苦しむのか?

ほとんどの場合、苦しまずに息を引き取ります。安楽死は薬を投与することによって行いますが、その前に麻酔を使用します。そのため眠るように亡くなるでしょう。しかし普段いる自宅ではなく、動物病院で処置をする場合もあります。いつもと違う雰囲気を感じ取って不安がる子もいるかもしれません。安楽死は、ペットを病気の苦しみから解放してあげるひとつの手段です。本記事では犬の安楽死はどのようなときに行われるのか、安楽死の基準や方法について詳しく解説します。

犬の安楽死とはどのようなものか

犬の白黒写真

犬(ペット)の安楽死とは、苦痛や重度の障害などがあり治癒の見込みがない犬を、飼い主の希望に従って死に至らせる措置のこと

全国の獣医師が所属している日本獣医師会では、安楽死について以下のような指針が示されています。

診療対象動物が治癒の見込みがなく、しかも苦痛伴っている、あるいは重度の運動障害、機能障害に陥っている等、安楽死させることが動物福祉上適当であると見なされる場合には、獣医師は飼育者と十分に協議したうえで、飼育者自身の意志、決定のもとに当該動物を安楽死させることは、許容される。一方、その他の理由で安楽死を余儀なくされる場合もあり得るが、いずれにしても、安楽死は、最終的な選択肢として、飼育者と獣医師が十分に協議して決定すべき重要な問題である。

引用元:日本獣医師会の小動物医療の指針

獣医師は上記の指針に沿って、安楽死を希望する飼い主に状況を聞きながら実行するかどうかを判断します。安楽死させたいと飼い主が言っても、その条件に当てはまらないこともあるのです。

では犬を安楽死させてあげられる条件としては、どのようなものがあるのでしょうか。

犬を安楽死させる条件は?犬と飼い主のQOL(生活の質)と回復の見込み具合が基準になる

一般的に以下のような条件であれば、犬を安楽死させてあげられる可能性があります。

  • 犬が治療をしても治る見込みがない
  • 犬のQOLが著しく下がっている
  • 治療費をこれ以上払えない、または介護できない(特例)

ひとつずつ解説します。

条件①:犬が治療をしても治る見込みがない

病気の治療をしていたけれど、治る見込みがない場合に安楽死の選択が可能です。たとえば腫瘍ができ手術をしたが転移して取り切れず、抗がん剤や放射線の効き目もなくどんどん弱っているケース、などが挙げられます。

なるべく苦しませない形で天寿を全うさせるか、犬が普段と同じ生活が送れなくなる前に安楽死をさせるかは慎重に判断しなければなりません。そのためかかりつけの獣医師と話し合ったうえで決めていきます。

条件②:犬のQOLが著しく下がっている

一般的には犬のQOL(生活の質)が下がっていないかを、安楽死を行えるかどうかの判断基準にします。

「犬のQOLが下がっている状態」とは、具体的に以下のような場合を指します。

  • 痛みが強すぎて鳴き続けていたり、眠れていなかったりする
  • 好きな食べ物を食べられない
  • 呼吸がしづらく眠れない
  • 下痢や下血が止まらず身体が汚れ、皮膚疾患が治らない

つまり病気で苦しんだり痛がったりして普段の生活が全く送れない場合、安楽死の条件に当てはまる可能性が高いといえるでしょう。

犬はしゃべることができないので、飼い主に「安楽死させてほしい」と訴えることもできません。そのため飼い主が犬を見てどう感じるかにかかっています。

もう少し一緒に過ごしたいのか、早く楽にさせてやりたいのか、どちらを選択しても飼い主が悩んだ末に決めたことであれば正解でしょう。

条件③:治療費をこれ以上払えない、または介護できない(特例)

動物病院は自由診療で治療費も高額。手術や入院の費用がかさめば100万円を超えることもあります。

ご家庭によってペットに出せる費用は異なるでしょう。治療費を出せず苦しませるくらいなら安楽死させたいという場合も、やむを得ない条件に入ります。

また大型犬や超大型犬の介護となると重労働です。どうしても介護が難しい場合も安楽死の条件に入るでしょう。

とはいえこの2つの条件に当てはまる場合でも、飼い主の独断で安楽死は選べません。かかりつけの獣医師と密に話し合いましょう。

動物病院では治療費の支払いや介護が難しい場合に、相談に乗ってくれることがあります。一人で抱え込まず、まずは動物病院へ行ってみてくださいね。

また以上に当てはまらない場合は、犬の安楽死は行えない可能性が高い

以上の条件に当てはまらない、もしくは当てはまっても獣医に「安楽死が適切だ」と判断してもらえなければ、安楽死は行えません。

その場合に動物の命を身勝手に絶つことは、動物愛護法で禁止されています。

愛護動物をみだりに殺し又は傷つけた場合は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処されます。

引用:環境省

犬の安楽死を行うべきかどうか?倫理的にどのように考えればよいのか

砂浜でフリスビーをくわえる犬

犬の安楽死に対する考え方は、国によっても違います。

大阪商業大学の杉田准教授が行った調査によると、オーストラリア人は犬の安楽死を受け入れやすい傾向にありました。一方日本人は、犬の安楽死を受け入れながらも否定的な意見が多いという結果に。また日本では、飼い主だけでなく獣医師も安楽死に対して消極的で、極力行いたくないと考えているようです。

とはいえ「苦しんでいる犬を安楽死させ、痛みや苦しみから解放してあげるのもひとつの選択肢」という意見もあります

精一杯お世話をしてきて、悩んだ末に安楽死を選択肢のひとつに入れたのであれば、まず動物病院で相談しましょう。

動物病院では獣医師だけでなく、看護師も味方になってくれます。悩みを打ち明けて、ペットの犬にとって何が一番最適な策なのかしっかり話し合ってくださいね。

動物病院の判断で、安楽死を断られることもある

飼い主が「犬のためには、もう安楽死しかない」と思っても、動物病院側の判断で断られるケースもあります。

たとえば獣医師の医療理念として安楽死に反対していたり、助かる見込みがなくても元気に生活できる期間がまだあったりする場合です。

断られたときは、他にどのような選択肢があるのか聞いてみましょう。選択肢が広がれば安楽死以外の道も開けるはずです。

どうしても獣医師と話が合わないのであれば、セカンドオピニオンを考えるのもひとつの手です。動物病院や獣医師によって考え方や治療方法は異なるので、検討してみてくださいね。

犬を安楽死させてあげるには、どこでどのようにすればよいのか

点滴

犬を安楽死させてあげるには、動物病院に連れていき薬を投与する必要があります。動物病院へ連れていけない場合は、獣医師が往診してくれることもあるでしょう。

まずは診察室や処置台で、犬の足または腕に点滴の管を入れます。そして手術前に使われるプロポフォールという麻酔薬を身体の中に入れます。

プロポフォールの効果で犬はすぐに眠りに落ち、意識がなくなるでしょう。そのため安楽死の際に痛みも苦痛も感じません。そこへ筋肉を緩ませる筋弛緩剤(きんしかんざい)を注射します。筋弛緩剤を入れると呼吸や心臓の鼓動が止まり、やがて死に至ります。

動物病院によっては、筋弛緩剤ではなく塩化カリウムという薬剤を使う場合も。塩化カリウムは、血液中の電解質(カリウムやマグネシウム)の濃度を高くし心臓を停止させる作用があります。この方法の場合も、麻酔薬と併用すれば痛みも苦しみもありません。

また動物病院によっては、飼い主に抱っこしてもらいながら処置をすることも可能です。もちろん見るのがつらいなら待合室で待つこともできるので、最期の時間をどう過ごすかを動物病院で相談してみてくださいね。

なお動物病院での安楽死の処置は、診察時間ではなく診察時間終了後や診察時間外(昼間)などに行われます。安楽死させる飼い主と診察待ちをしている飼い主、そして犬自身に配慮するためです。

犬の安楽死にかかる費用は、大きさによって異なるが7,000円から15,000円

犬の安楽死にかかる費用は、犬の体重や動物病院によっても異なりますが、一般的には7,000~15,000円はかかると思っておきましょう。

犬の安楽死に使う麻酔などの薬は体重で算出されるので、もし費用面が心配なら大体の金額を動物病院で確認してみてください。

動物病院によっては不必要な安楽死を減らすため、高額に設定しているところもあるようです。あらかじめ確認しておくと安心でしょう。

安楽死と殺処分の違い

安楽死と殺処分の大きな違いは、命を絶たせる理由です。

安楽死は医療の延長。獣医師が犬に最期にできる医療とされています。それに対し殺処分は、飼い主が見つからない迷子犬や野犬・飼えなくなった犬を殺すために行われます。

一般的に安楽死は麻酔をかけ苦しまない方法を取りますが、殺処分の場合はそうとは限りません。

環境省が出している「動物の殺処分に関する指針」によれば、殺処分も最小限の苦痛になるような方法と指定されています。しかし実際は、数分間窒息で苦しむとされる炭酸ガスによる殺処分が一般的な方法でした。

とはいえ近年では動物愛護を考え、自治体の約半数は薬剤による殺処分なども行っています。一概に殺処分=苦しむというわけではなくなってきているのが現状です。

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