この記事では犬が死ぬ前の兆候や行動について解説します。看取るための心構えや準備をしておきましょう。犬の最期は苦しそうに見えることも多いですが、飼い主や家族が優しく接してあげて、安心できる状態で見送ってあげることが大切です。
犬が死ぬ前のサインは?
犬は最期が近くなると食欲がなくなったり、尿が出なくなったりします。老犬の場合は散歩の時間が短くなったり寝る時間が増えたりすることも死期が近い兆候です。いよいよお別れのときが近づくと、体温が著しく低下したり、痙攣を引き起こしたりすることが多く見られます。
犬を看取るとき飼い主にできることは?
愛犬を看取るときは近くで「ありがとう」「お疲れさま」などポジティブな声をかけながら、優しくなでてあげましょう。なるべく犬の不安を取り除いてあげられるようにすることが大切です。
犬が死ぬ前の兆候・行動
犬は死が近づいてくると以下のような兆候・行動が見られるようになると言われています。
- 食欲がなくなる・まったく食べなくなる
- 排尿しなくなる・頻度が減る
- 黒い便・血便などが出る
- 嘔吐や下痢を繰り返す
- 寝ている時間が長くなる
- 鳴きつづける
- 呼吸が不規則になる
- 独特のニオイがする
- 体温が著しく低下する
- 発作・痙攣(けいれん)を起こす
- 刺激に反応しなくなる
もちろん、犬がみんな同じような兆候・行動を見せるわけではありません。
しかし死が近づいているサインを把握しておくことで、お別れのときまで一緒に寄り添って過ごす時間を、より意識的に大切にすることができるでしょう。
食欲がなくなる・まったく食べなくなる
老衰にしろ病気にしろ、犬が死ぬ直前は体が弱くなって体力が落ちているので、食欲がなくなったり、まったく食べなくなったりしてしまいます。
好物だったフードも食べられなくなったときはお別れのサインかもしれません。
食事をしなくなってしまうと、犬はエネルギーを吸収できなくなってしまうので、体調が悪化していきます。
噛む力が弱くなってフードを食べにくくなっていることもあるので、その場合は水でふやかして食べやすくしてあげるとよいでしょう。
排尿しなくなる・頻度が減る
犬は食欲がなくなることで、水分の摂取量が減ってしまい、そのぶん排尿の頻度が減ったり、回数が少なくなったりします。
また体が弱って腎機能や血圧が低下することで、正常に尿が生成されなくなり、まったく排尿しなくなることも。
腎臓病による腎機能の低下は、おもに老化現象のひとつとしてあらわれます。また排尿できなくなると体のなかに老廃物がたまり、症状が進行していくと末期には「尿毒症」という病気を引き起こすのが特徴です。
尿毒症になると犬からアンモニアのような口臭がしたり、痙攣(けいれん)・嘔吐・下痢などの別の兆候につながったりします。
黒い便・血便などが出る
犬の黒い便や血便は、胃や腸などの消化器官のどこかで出血しているサインです。胃潰瘍や腸閉塞、リンパ腫などの原因が考えられます。便が黒くなるのは、消化器官から出た血が変色するからです。
このように黒い便や血便は犬が死ぬ間際だけの症状ではなく、病気の兆候としてあらわれます。もし健康な状態の犬が黒い便や血便をしだしたら、すぐに病院へ連れて行ってあげましょう。
黒い便や血便とあわせて、体温の低下や呼吸の乱れなど、別の症状があらわれはじめたら死期が近いかもしれません。
嘔吐や下痢を繰り返す
老衰によって消化器官が衰えたり、病気や感染症で体調が悪化したりすると、嘔吐や下痢が続くようになることがあります。
とくに死の数日前からは下痢が続くことが多いそうです。体の筋肉や内臓が衰えて、排泄をするためのコントロールができない状態になると、下痢が漏れてしまうことがあります。
老犬の場合は消化機能が衰えているので、硬いフードやガムを与えるのを避けるなどして、胃腸をいたわってあげましょう。
寝ている時間が長くなる
犬が1日に寝る時間は、平均して12~15時間程度と言われています。しかし老化によって体力が衰えてくると、睡眠時間は18~19時間ほどになることも。
寝る時間が増えたからといってすぐに死ぬというわけではありません。しかし老衰のサインという可能性があります。
もし犬がこれまでよりも長い睡眠時間をとるようになったら、運動時間が減ったり、体を動かさないことで食欲不振につながったりして、体がいっそう衰弱しやすくなるので注意が必要です。
老犬の場合は無理のない範囲で散歩を続けつつ、床ずれしないようにベッドを用意したり、意識的にたくさん水を飲ませてあげたりしましょう。
鳴きつづける
犬は死期がせまってくると、いつもよりも鳴くようになることがあります。
いくつか理由は考えられますが、一説によれば犬が自分の体に起きている異変や不調を察知して、不安をやわらげるために飼い主に甘えようとして鳴くのだとか。
また老犬が夜鳴きをすることもあります。認知症による昼夜逆転や赤ちゃん返り、体の痛み・不調をうったえて鳴く、などの理由からだと考えられているようです。
また死の間際には、犬の意識がないにもかかわらず鳴くことがあります。呼吸困難のときに呼吸しようとすると、狭くなった喉が震えて鳴いているように聞こえるそうです。
呼吸が不規則になる
犬が死ぬ間際にはこれまでとは違う呼吸になることがあります。「ハアハア」と肩でする浅い呼吸になったり、逆に深くゆっくりとした呼吸になったり、不規則になりはじめたら最期が近いかもしれません。
短時間の呼吸停止を繰り返すこともあります。呼吸困難になると胸やお腹の筋肉を動かして「努力呼吸」という浅くて早い呼吸をしますが、それは息をするのも大変な状態のサインです。
開口呼吸がつづいているとよだれが垂れてきてしまうことがあります。犬の口元にタオルをおいたり、ときどき拭いたりしてあげましょう。
独特のニオイがする
犬の体が弱まってくると、消化器官や腎臓などがうまく機能せず、毒素を代謝できなくなってきます。そのため死期の近い犬は、たまった毒素によって独特なニオイを発するそうです。
一般的には尿やアンモニアのようなニオイがすると言われています。嘔吐を繰り返している場合は、そのニオイによって口臭がキツくなっていることも。
口や全身から独特なニオイがしてきたら最期がせまっているサインかもしれません。体を優しく拭いてあげるなど、犬を清潔に保ちながらケアしてあげましょう。
体温が著しく低下する
犬の平均的な体温は、人間より少し高めの38~39℃程度です。しかし死が近づくと体が衰弱して代謝が落ちるので、体温を維持する機能が失われていきます。
体や足先が冷たくなりはじめたら、最期が近いサインです。体温が下がると寒さを感じて震えることもあります。その場合は温めたタオルや湯たんぽを使って、犬の体を温めてあげましょう。
ただし病気や細菌感染による死の間際には、免疫機能によって体が熱を上げるため、逆に体温が平均よりも高まることもあります。
発作・痙攣(けいれん)を起こす
犬の最期がいよいよ近くなると、発作や痙攣(けいれん)によって手足をバタバタと動かす状態になることがあります。1回限りではなく、間隔をあけて発作や痙攣が続くことも珍しくありません。
どうしても苦しそうに見えてしまいますが、一説にはすでに意識がないためそこまで苦しくないという見方もあるそうです。
飼い主にできることは、無理に体を押さえつけたり持ち上げたりせず、うろたえずに見守ってあげることです。痙攣で伸びた足や体がぶつかっても痛くならないように、周囲にタオルやクッションを敷いてあげましょう。
刺激に反応しなくなる
いよいよ死の間際になると、意識レベルが低下することで、犬はあらゆる刺激に対しての反応が薄くなっていきます。
立てなくなったり歩けなくなったりするだけでなく、飼い主を目で追いかけなくなったり、呼び声にも反応しなくなったりするそうです。
意識が朦朧(もうろう)として寝たきりの状態になったら、犬を看取る覚悟をしておきましょう。生きているうちに最善を尽くして、できるだけ後悔のないのないように愛犬の旅立ちを見送ってあげてください。
犬の寿命と老化の兆候
愛犬と過ごす時間はかけがえのない宝物ですが、長年ずっと一緒にいると「いつか来るお別れのとき」がふと頭をよぎることもありますよね。
そこでこの見出しでは、犬の寿命や老化の兆候について解説します。限りある時間だからこそ、愛犬をめいっぱい大切にしてあげてください。
犬の寿命は10~14歳前後
犬は人間と比べると老化のスピードが早い生き物です。小型犬~中型犬で約4倍、大型犬で約7倍ものスピードで年をとると言われています。
犬の平均的な寿命は以下のとおりです。
- 小型犬~中型犬:約14歳前後
- 大型犬(体重20~40kg):約12歳前後
- 超大型犬(体重40kg以上):約10歳前後
トイプードルやチワワ、ミニチュアダックスフンドなどをはじめとする小型犬、また柴犬などの中型犬は、約14歳前後が平均的な寿命です。小型犬のほうが長生きする傾向にあります。
ラブラドールレトリバーなどの大型犬だと約12歳前後、グレートデーンなどの超大型犬になると約10歳前後と、体が大きい犬種ほど平均寿命は短くなっていくようです。
このように犬種によって差はありますが、7~8歳を超えると人間でいうところの40~50代以上にあたり、すでにシニア犬といえる年齢に差しかかります。
人間と同じように年をとるほど体の不調や老化は進んでいくので、犬のライフステージにあった生活環境を意識的につくってあげるようにするのが大切です。
犬の老化のサイン
人間が老化すると視力や聴力などの機能をはじめとして体の至るところが衰えていきますよね。犬の場合も同じく、視覚や聴覚、消化器官、関節などが衰えていきます。
とくに代表的な犬の老化のサインは以下のとおりです。
- 毛並みや毛ツヤが悪くなる、白い毛がふえる
- 耳が遠くなる
- 目が白っぽくなる
- 食欲が低下する
- 足腰が衰える
- 反応が遅くなる
病気や怪我とちがって、老化は目に見えにくいのでなかなか気づかないかもしれません。
しかし寿命がせまるにつれて、少しずつ痩せてきたり、歩き方がトボトボしてきたり、食が細くなったりといった兆候は顕著になっていきます。
いくつかのサインについてもう少し詳しく見ていきましょう。
毛並みや毛ツヤが悪くなる、白い毛がふえる
老化によって新陳代謝が少しずつ減少していくと、毛並み・毛ツヤが悪くなったり、白い被毛やヒゲが目立ったりしてきます。
また抜け毛が増えて、体全体の毛量も少しずつ減っていくという変化も。徐々に変化していくため飼い主から見ても分かりにくいサインかもしれません。
被毛やヒゲの変化以外にも、目ヤニ・耳垢が増えたり、口臭がキツくなったり、老化のサインは少しずつ明らかになっていきます。
普段からスキンシップを兼ねてブラッシングしてあげながら、小さな変化でもなるべくキャッチできるように、愛犬をよく見てあげましょう。
目が白っぽくなる
犬の目が白っぽくなってきている場合は白内障という可能性もありますが、シニア期に入ると白内障でなくても目が白っぽくなります。
老化によって目が白っぽくなるのは「核硬化症」(かくこうかしょう)といって、目の水晶体核が少しずつ固くなっていくことが原因です。
各硬化症であれば痛みも違和感もなく、視力が落ちることもないと言われています。ただし白内障かどうかの判断は難しいので、気になるようなら必ず獣医師にしてもらうよう注意してください。
参考:核硬化症って知っていますか?|公益社団法人 埼玉県獣医師会
足腰が衰える
犬は高齢になると、筋肉や関節が衰えはじめます。これも人間の老化と同じですね。
筋肉や関節の衰えはどういうサインで見抜けるかというと、たとえば散歩の時間が短くなったり、階段・段差を嫌がるようになったり、といった例があります。
「散歩に行ってもすぐに帰りたがるようになった」「散歩中にしっぽを振らなくなった」「今までは難なく越えていた階段・段差を前にすると躊躇する」など、些細な変化がないかどうか観察してみてください。
老化によって筋肉や関節が衰えた老犬にとっては、今までの散歩ルートが負担担ってしまう可能性があります。
もちろん年をとってからの運動も大切ですが、場合によっては関節の痛みを伴っているケースもあるので、犬にとって無理のない範囲で体を動かせるように配慮してあげましょう。
シニア期に入ったら年2回の健康診断がおすすめ
多くの動物病院や獣医師会では、基本的に年1回以上は犬の健康診断をすることを推奨しています。
しかしシニア期に入ると病気や老化による健康リスクは増えはじめるので、年2回程度の健康診断に移行するのがおすすめです。
犬の成長スピードは人間の数倍なので、シニア期に入るとよりいっそう早いスピードで老化が進んでいくと感じられるでしょう。そのぶん健康リスクも高まります。
どんな病気も早期発見が大切です。少しでも愛犬に長生きしてもらうために、健康診断の回数を増やすことを検討してみてはいかがでしょうか。
犬を看取るときに考えるべきこと
ここまで犬の死期が近い兆候・行動や、老化のサインについて紹介してきました。あまり考えたくないことかもしれませんが、いつか愛犬とお別れすることは避けては通れません。
もし死がせまっている兆候があらわれはじめたら、看取り方や葬儀方法についても考えておきましょう。
犬を看取るための心構え
ずっと連れ添ってきた愛犬とのお別れは、そう簡単に割り切れるものではないですよね。
飼い主からしてみれば家族や友人との別れと同じくらい、大切にしてきたペットとの別れは悲しいことでしょう。
近年ではペットを亡くした悲しみから抜け出せない「ペットロス」という症状も認知されてきていますが、実際に「もっと何かできることがなかったか」「もっと早く病気に気付けていれば」と自分を極度に責めてしまう人も少なくありません。
いつか訪れる愛犬との別れを前にして、飼い主にできるひとつめのことは、看取ること・お別れすることの心構えをしておくことです。
愛犬との別れを悲しむことは何も悪いことではありません。大切なのは、“悲しくても最期までしっかり見送ってあげるための覚悟”をしておくことです。
愛犬が安心して旅立てるように、心の準備をしておきましょう。
病院で看取るか自宅で看取るか
犬が病気で旅立つ場合や、老衰で天寿をまっとうする場合など、さまざまなケースが考えられますが、看取る場所についても考えておきましょう。
代表的なのは「病院で看取る」か「自宅で看取るか」の2択です。
愛犬が病気で通院していた場合は、獣医師から余命について伝えられる機会もあるでしょう。そのときに看取り方についても相談してみてください。
もしも薬が効かなくなったら延命治療をするか、それとも延命治療はやめて慣れ親しんだ自宅の安心できる環境で看取るか……。
病気が重症化すると、犬は苦しそうに最期を迎えてしまうことも珍しくありません。これ以上の延命措置をしても苦しいだけと判断できる場合には、獣医師と相談のうえで安楽死を選択するということもありえます。
どんな選択をしたとしても、最終的には愛犬を最大限にかわいがって、優しい言葉とともに見送ってあげたいですよね。
最期になって取り乱したり慌てたりしないよう、事前にどのような看取り方にするかを考えておきましょう。
犬を看取るとき飼い主にできることは?
愛犬を看取るときは、なるべく不安を取り除いてあげられるよう、近くにいて優しくなでながらポジティブな声をかけてあげましょう。
ずっと一緒に過ごしてきた家族が優しい雰囲気で見守ってくれることが、犬にはもっとも安心できる環境です。
呼吸が難しかったり、痛みが襲ってきたりで、犬の最期はみていてつらいことがあるでしょう。しかしそれは犬にとっても同じで、きっと不安が大きくなることでしょう。
そんなときに家族の優しい寄り添いがあれば、きっと安心して旅立つことができるのではないでしょうか。たくさんの愛情と思い出を胸に、「ありがとう」「お疲れさま」と優しい言葉をかけてあげてください。
犬の葬儀・供養についても考えはじめよう
愛犬との別れを前にして、まだ気持ちを切り替えられないかもしれませんが、死期がせまったときには葬儀方法や供養方法について考えておくのも大切です。
愛犬の葬儀・供養をきちんと執り行うことで、家族にとっても心の整理になります。
近年では犬猫を中心としたペット葬儀も普及し、人間と同じくらいに丁寧な火葬や供養が一般化してきました。
昔は自治体に依頼してほかのペットと合同火葬をするのが一般的でしたが、今ではペット葬儀の専門会社に個別火葬を依頼する家庭も増えています。
お通夜をしたりお別れセレモニーをしたりと、火葬以外にも丁寧に愛犬を見送ってあげるための式を用意している会社も多いです。寺院や墓地と共同で、永年供養や埋葬をしてくれる会社もあります。
悔いなく愛犬を送り出すためにも、自分が納得できる葬儀・供養方法を検討してみてください。
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